痛覚
今週のお題「カバンの中身」
初めてお題にのって書いてみます。
カバンの中身とのことですが、
さてお気に入りの革小物がある訳でも、きっちり書かれた手帳があるのでもない。
あるのは簡素化にしてはぺしゃんこ過ぎる財布、デオドラントスプレーや傷だらけのこのスマホが現在の私の疲弊ぶりを物語っているのかもしれない。
かつての私の通勤バッグは重かった。
ぱんぱんのバッグの中身は主に単行本や雑誌が入っていた。
仕事帰りに本屋に立ち寄り、ついつい衝動買いしていたのだった。
なのでカバンは触るとごつごつしている。
機能性に欠けたステイタス偏向気味のバッグなので内側に余裕がないのだ。
このバッグについては言いたい事が沢山あるが、今はカバンの中身についてなのでやめておく。
読みたい本も買って家のドアの前に立った。
さあ夕飯を作って早めに落ち着きたい。
軽く尿意もする。
と、ササっと鍵を取り出そうとバッグのスリットに手を入れた瞬間
鍵先が私の中指爪の間に勢いよく刺さった。
鍵束は朝の私によって逆さまにスリット突っ込まれていた。
誰もいないマンションの廊下に 「痛っ」 という短く小さな叫びが響いた。
その時のやり場のない悲哀と羞恥、後悔、憤りの感情は忘れられない。
それからカバンの中身を探る時、おずおずと手を伸ばしている。