古書店
家にある100冊位の本を売った時の事だ。
まーあるわあるわ、自分の過去が本棚から一冊ずつ手にするごとに繰り広げられていった。
腰痛に病んでいる頃に購入した本や、
心理カウンセラーを目指していた時の本、
小説の文庫本、
料理の洋書、
ここ数年の私の軌跡がバタバタと積まれていった。
私は本が好きだ。
けれどそれ以上に、本に対して心の拠り所を求めていた。
本が友達、なんて思っていた時もあった。
私は生まれた時から家業の本棚に囲まれてきて、
中でも箱入りの上製本に馴染みのある環境だった。ただし商品のそれらを読むというわけではなかった。
沢山の箱入りの本を見てきて馴染んできた人生で、先程最後のお別れをした。
父の本棚にあった漱石全集を最後に積み、手で触れた。
ああ、最後か、もう箱入りの本に触れることはないのだなあ。と思うと涙が出た。
だけど不思議なことに、近所の古書店の社長に持って行って貰うとサバサバした気持ちになった。
等身大の私を実感した。
今までの私は古書店の娘として本を愛していた。
自宅に残った本から一冊を手に取り、少し読んだ。
本の世界に入り込んだ。
本屋という皮を脱ぎ捨てたような時間だった。
とどのつまり読んでもいないのに本に愛着をもつ蒐集家だったのだ。今ではそう思う。
これからは一冊一冊読んで大切にしていきたいと思った。