餡とコーヒー

和菓子とコーヒーに癒されるひとりが書いています。

瓶詰め

台所の隅に一つの瓶詰めがある。

 

長い間放置されたため底に澱が溜まっている。

 

それは少しの哀しさと諦めが抽出されたようなもの。

 

開けられることのないそれは、内容する役割を完全に無視されてしまった。

 

そのまま朽ちてゆく存在となったものを抱えひたすら時を待つ。

 

「いつ開放されるんだろうなあ、怒りはとっくに過ぎたけど。

 

どうせその後に割られるか資源ごみに出されるのがオチだろ。

 

持ち主はかなりルーズだけど、良心の類はまだ有るみたいだ」

 

そうやってしばらく考えてるみたいだった。

 

 

「ちっ。も少し信じてやるか」

 

溜息のように澱を揺らし、

瓶はひっそりと運命を受け入れた。