台所の隅に一つの瓶詰めがある。
長い間放置されたため底に澱が溜まっている。
それは少しの哀しさと諦めが抽出されたようなもの。
開けられることのないそれは、内容する役割を完全に無視されてしまった。
そのまま朽ちてゆく存在となったものを抱えひたすら時を待つ。
「いつ開放されるんだろうなあ、怒りはとっくに過ぎたけど。
どうせその後に割られるか資源ごみに出されるのがオチだろ。
持ち主はかなりルーズだけど、良心の類はまだ有るみたいだ」
そうやってしばらく考えてるみたいだった。
「ちっ。も少し信じてやるか」
溜息のように澱を揺らし、
瓶はひっそりと運命を受け入れた。